前田紘孝
Hirotaka Maeda
エンタメ創出会社(株)ソウルエイジ、映画プロデュース会社スクラムトライ合同会社を経営。役者業を経験した後、映画プロデューサーとして活躍。2014年4月に公開された映画「そこのみにて光輝く」は、モントリオール世界映画祭の最優秀監督賞、レインダンス映画祭のBest International Feature部門最優秀作品賞を受賞。
第87回米国アカデミー賞外国語映画賞部門への出品作品。
森田篤
Atsushi Morita
「ぐるぐるナインティナイン(NTV)」「行列のできる法律相談所(NTV)」などでディレクターを経て、2008年に番組•映像制作会社Foolenlargeを設立。現在、「私の何がイケないの?(TBS)」、「櫻井・有吉アブナイ夜会(TBS)」、「しくじり先生(EX)」などの多くの人気バラエティ番組を制作。
業界にて光輝く、二人のプロデューサー
今日の『勝手にグラコネ対談』では、本年度、映画賞をふたつも受賞するなど、映画界でのりにのっているプロデューサー前田紘孝さん。そして有名番組をいくつも手掛けるテレビ界のやり手プロデューサー森田篤さんをグラコネします。
元々、藤本がこのお2人をグラコネしたきっかけは、森田さんから「映画を作るぞ」という話をお聞きし、それだったら前田プロデューサーを繋ぎます!となったんですよね。 繋いだご縁が映画のみならず、色々な案件でご縁ができている事を嬉しく思っています。私はタレント業もやっていたので、映画やテレビ番組をつくる世界を少しは知っているつもりですが、一般の人達にとっては、『プロデューサー』という職業は、いったいどんな存在なのか、謎に包まれた部分が多いと思います。みん なが知りたい、そのお仕事内容について本日はお伺いしていければと思います。それではよろしくお願いします!
まずは自己紹介ですね。もともと僕はテレビのディレクターあがりでして、今はテレビ番組を制作する会社を経営し、番組プロデューサーをやっています。先程藤本さんが言ってくださった通り、フーリンラージで今年、映画を撮ろうとしています。そのチームに、実は藤本さんにご紹介頂いた前田さんにプロデューサーとして参加していただいてるんです。
テレビと映画とはまた違うので、前田さんからのアドバイスはとても有難いし、心強いです。藤本さんには、前田さんを繋いでもらって感謝してます。
僕は映画プロデューサーです。もともとは役者をやってまして、ウォーターボーイズという映画に出演していました。最初に手掛けた作品が、2010年の東京国際映画祭で素晴らしい評価をいただき、それから映画づくりをずっと続けています。
『そこのみにて光輝く』はモントリオールの世界映画祭で最優秀監督賞を受賞されたんですよね。まずはおめでとうございます。映画の内容について、ご紹介いただいてもいいですか?
『そこのみにて光輝く』は、佐藤泰志さんが遺した唯一の長編小説を映画化したものです。佐藤さんの故郷である函館を舞台にそれぞれ事情を抱えた3人の若者たちが織りなすヒューマンドラマで、監督は呉美保さん。第87回米国アカデミー賞外国語映画賞部門への出品作品に選ばれました。
すごくいい映画でした。どう表現すれば良いんだろう。心に絵で残るような映画。本当に感動しました。友達も3回観に言ってたので、前田さんと知り合いだと言ったらとても驚いてました。(笑)
プロデューサーのお仕事とは?
制作のお仕事って、連夜遅くまでやっているイメージがあるんですけど、やっぱり時間との戦いって感じなんですか?
番組をつくりあげるのって本当に毎回ギリギリで、毎回難産です。これ絶対に間に合わないなってことはこれまでに何回もありました。でも制作が間に合わなくて真っ黒な映像が流れるってことって、見た事ないでしょう?何とかなるもんなんですよね不思議と。
テレビも映画も製作において、そういう所は共通していて、究極の時は寝ないって選択ですよね。
以前、深夜の撮影で、ADが仕事中にどうしてもウトウトしちゃうから「お前、寝ないように空気イスやってろ」って言ったら、そのAD、空気イスの状態のまま寝てました(笑)逆にスゴい。
でも、こういった究極の時を一緒に乗り越えるから、監督以下、スタッフの絆って言うか、繋がりはものすごいですよね。
森田さんとは一緒にお仕事をさせてもらった事がありますが、スタッフとの絆はものすごく感じましたね。私の立ち位置が第三者的だったので森田さんの厳しい事を言っている裏でスタッフを守ろう成長させようと思って考えてる姿も見ていましたから。そこから繋がりが生まれるのでしょうね。究極の時を逃げ出さず一緒にやっていく一体感は尊敬に値します。お二人にとって、そうした過酷な環境のもと、作品をつくり上げる喜びって何ですか?
いちばん嬉しいのは、やっぱりお客さんの顔を見る時ですね。劇場からお客さんから出て来た時に、うわぁ良かったねぇなんていうのを聞いた時には鳥肌が立ちま すね。作品がいくら優れていても、一般的には監督さんが素晴らしいとか、役者さんが凄いってなるのが普通で、プロデューサーが良かったってことにはならないじゃないですか。僕らは、表に立つ人に全ての華を持たせ、悪いことが起きた時は、すべて自分の責任になるって仕事をしているんです。
それは僕らも同じです。街角で僕らが作った番組が話題になってたり、僕らが作った企画が巷で真似されてたり、楽しんで観てくれているという事を実感した時ですね。特に視聴率がいい時はとびきり嬉しいです。テレビ番組は、放送翌日には視聴率という通知表がはっきりと出るので、明暗が分かれます。視聴率が良かった時は風を切るように局を歩けるし、悪かった時は仮病つかって会議も休んだりなんかも(笑)
悪かった時は仮病つかって会議も休みますって。(笑)さすがバラエティー番組のP。いちいちコメントが面白いですね。
クラウドファンディングで日本最高額を記録
お二人ともプロデューサーというお仕事をされていますが、映画とテレビでの違いってどこにあると思いますか?
いわゆるお金の成り立ちっていうのが、まったく違いますね。テレビでは番組スポンサーが決まっていて、そこから制作予算がきちんと出ますけど、僕がやっている映画では、決められた企業から予算をもらってやる感じではありません。複数の企業からとか、個人からも出資してもらっています。
しかも映画って一発勝負ですから、すごくリスキーですよね。僕らがやってるテレビのレギュラー番組は、視聴率が悪くても、そこから何が悪かったのかスタッフ内で分析して、次につなげて挽回したりする事もできる。
なるほど。お金の成り立ちがこんなにも違うのですね。映画ってこれほどリスキーなんだ。すごく重みを感じます。
森田さん、諸々の試行錯誤や演出で修正をする・・・と簡単におっしゃいますがそれができるってすごい事ですね。
いや、簡単ではないですし、僕には出来ない芸当なので、ここはカットでお願いします(笑)
ネットニュースで前田さんの記事を読みました。次回作の映画製作プロジェクトのクラウドファンディング(インターネット経由で広く財源の協力を募ること)が、1500万円以上と日本での最高記録になったんですよね。
ええ。いまは違いますが、募集締切当時は、日本での最高額ということでニュースになりましたね。映画のストーリーの核である『人と人の繋がりや絆』っていうのを実感してもらおうという思いもあって、クラウドファンディングでの募集を行いました。
クラウドファンディングを選んだ理由
クラウドファンディングって、すごく今の時代にあった資金調達の方法ですよね。選んだ理由はありますか?
観客を集めるために役者を誰にしなくちゃとか、企画を変えていかなくちゃとか、映画をビジネスに寄せていくと、作品がもともと持っていたエネルギーっていうのが、どんどん損なわれてしまうんです。少数のスポンサーに支えられた場合、それはいたしかたないことなのかも知れません。でも、本来は作品に映画ビジネスを合わせていくことが正しいはずなんです。そこで僕はクラウドファンディングという手法を選びました。
前田さんの生き方っていうか、映画への思いがあるから、多くの人に賛同してもらえたんですね。
世にこの映画を出すことが嬉しい。そういう気持ちを持った人たちから集められた製作資金だから、作品本来の良さを徹底的につくることができたんです。
視聴率がすべての世界、そこで意識すること
森田さんのいるテレビの世界って、視聴率がすべてですよね。その中で番組をつくるために意識されていることはありますか?
視聴率が全てという訳ではないですが、無視できない要素であるのは間違いないです。視聴率が悪いと番組が終わってしまいますから。
最終的にエンドユーザーを見るっていうのは、プロデューサーにとって大切なことですよね。事務所のためにとか、スポンサーのために作品があるのではなく、常に僕達はお客さんのためにつくっているんだという思いを持っていないと、作品の質がブレてしまうんで。いろんな所から圧は来るけど、プロデューサーは戦っていかないと。
グラコネした2人が映画を作る事を楽しみにしています。
「映画を作る」というところから、前田さんと森田さんをグラコネした訳ですが森田さんも2015年は、いよいよ映画ですか!
そうですね。チャレンジしてみたいですね。前田さんの領域にお邪魔いたいます!
今、映画創りで1番悩んでいるところはどんなところですか?
やっぱり、資金集めですね!お金が集められないと映画は作りたくても作れませんから。そこをまさに前田パイセンのお力をお借りしようというわけです!藤本さん、ナイスグラコネ!
まもなく公開、『神様はバリにいる』
最後に前田さんの次回作『神様はバリにいる』をこのグラコネを見てくださっている方々に、ぜひ告知してください!
この映画は、原案者クロイワ・ショウさんの実話を元にしたエンタテイメント開運ムービーです。監督は『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男さん。主演は堤真一さん。他にも尾野真千子さん、玉木宏さんら豪華キャストが多数共演しています。簡単に言うと、主人公がバリに住む謎めいた日本人大富豪に出会い、人生哲学を学ぶっていうストーリーなんですが、笑いあり、涙ありと、とても面白い映画となってい ます。2015年1月17日に全国公開予定です。
ビジネスに失敗し、借金に苦しむ女社長が主人公なんですよね。これは観なくちゃって思ってます。
バリの人は、いたる所に神様がいると敬っている感謝の達人たち。そんなバリで主人公が、不動産ビジネスで成功した『アニキ』から、物事の本質を学んでいくんです。真衣ちゃんみたいな女性起業家はもちろん、自分を変えたいと思っているすべての大人たちに届けたい映画ですね。映画の中で、沢山の素敵なアニキ語録が出て来るんですが、きっとグッときますよ。
前田さんはこの映画で大変な思いをしたって聞きましたけど、どんな苦労があったんですか?
撮影のために現地入りした時に、突然、撮影許可がおりないって言われちゃったんです。キャストとかもうみんな来てるのに。マジで凍りつきましたね。
これはかなりの裏話ですね!シャレにならないです。。(笑)どんな理由があってたとしても最後はプロデューサーの責任になる訳ですから。そういう意味でも前田さんが命を賭けた映画なんですね。映画を観るのがますます楽しみになってきました!『神様はバリにいる』楽しみにしています!
本日はどうもありがとうございました!
左から森田篤 、藤本真衣、前田紘孝
vol.25
vol.24 後編
vol.24 前編
vol.23
vol.22
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vol.21
vol.20 前編