つながるをつくる。株式会社グラコネつながるをつくる。株式会社グラコネ

【BLOCK#4】マイクリ、ブロックチェーンゲームにかけるその想いとは


今回のインタビューは、ブロックチェーンゲーム業界を牽引するdouble jump.tokyo株式会社の上野広伸代表取締役と玉舎直人取締役のふたりだ。

double jump.tokyoが運営している「My Crypto Heroes(通称:マイクリ)」は、昨年11月にマイクリをリリースして以来、破竹の勢いで躍進。今やブロックチェーンゲーム業界の歴史を変えたと言っても過言ではない。

それまでブロックチェーンゲームのDAUはせいぜい数十人~数百人であったところを一気に数千人規模まで引き上げたのだ。
マイクリは、dAppsゲームの可能性を更に広げる為、日本で初となるdAppsゲームを題材としたハッカソンを2019年4月20日に開催した。

また2019年6月24日、ブロックチェーンゲームを開発・運営するために必要な開発・エコシステム構築・ファイナンス・人材育成などを支援するプログラム『MCH+』の提供することを発表している。

『MCH+』とは、「My Crypto Heroes」で開発したシステムやノウハウをフレームワーク化し、ブロックチェーンゲーム開発企業やチームなど、同プログラムに参加するユーザーに基本無料で提供する試みだ。『MCH+』のフレームワークを利用することにより、ブロックチェーンゲームの開発ノウハウがなくても、短期間で本格的なブロックチェーンゲームを開発することができるようになる。他社を支援するような彼らの言動を、既存業界の人が聞けば耳を疑うかもしれない。

しかし、この新しい経済圏では彼らのやり方がまさしくブロックチェーンらしくあり、本質的な動きと言えるのかもしれない。今回のインタビューでは「マイクリ」というゲームに焦点をあてながら、世界を牽引する彼らの想いに迫りたい。


では、早速ですが、まず最初にハッカソンをやろうとなった時、やってみようと思った理由や、Dappsゲームのハッカソンならではの面白みなどをお二人に聞いていきたいと思います。

3月に藤本さんが主催され、僕も登壇したイベント「dApps Gameから見るパブリックチェーン業界 2019」の前日に、真衣さんからハッカソンはいかがですか?とお話をいただいた時に、僕、「やりましょう」と瞬時にお答えしたと思うのですが、実は僕らもやりたいと思っていました。(笑)

そうだったのですか!?

後でお話させていただく『MCH+』という構想がありまして、当時まだ名前がなかったのですけど、マイクリプトヒーローズのアセットを使って、エコシステムを外へもっと広げていきたいなと思っていました。

元々、マイクリプトヒーローズのアセットとマイクリプトヒーローズというゲームの中で一つの完結するエコシステムを作っていました。でもせっかくイーサリアムの中にあるブロックチェーンを使った仕組みなので、もっとエコシステム自体の拡張を図りたいなという想いがありまして。そういう構想をずっと持っていたのです。

まずはゲームの中のエコシステムの一時的な完成体としてランド実装までは集中して、それが完了したら次のステップに行こうという構想は前からありました。そこにたまたまちょうどいいタイミングでお声かけいただけたという・・・

本当に凄いグッドタイミングだったのですね!

我々としては、ご提案いただかなければ自力でやろうとしてました。今回コミュニティの力でできたことが、ものすごくマイクリらしくて嬉しいなと思っています。

確かに!そうですよね。そのほうがマイクリらしいかも。
誰かが言い出したら、それがどんどん実現していくという雰囲気がありますよね。

そうですね!僕らが「こういうことをやる!」ではなくて
やりたいなと思っているユーザーさんが勝手にやったっていうのはすごくマイクリらしいなと思います。

そういうところはマイクリを見ていると本当に面白いなと思います。他のゲームとは違うなと思うところでもあります。

例えば今回のハッカソンのケースのように、今までコミュニティが自発的にやったことの中で面白いものを、まだマイクリを知らない方達に教えていただいても良いですか?

これはよくお話させていただいく代表的なケースなのですが、一般的なゲームは新規のユーザーになるべく楽にゲームを体験していただくためにアイテムばらまきをします。でも、マイクリの場合はご存知の通り設計上、アイテムのばらまきをしてしまったらコミュニティが損をしてしまいます。

ですから、アセット価値がどんどん暴落していくのでバラマキを我々としてはやりたくてもできない。それがマイクリという事をコミュニティの皆さんもご存知です。

そこでプレイヤーさんが自発的に新規のユーザーさんにイーサリアムを投げたり、いらないアイテムをあげて初心者を支援するようなことが、普通に起こっているのです。

僕達も当初はそんな風になったらいいねと話をしていたのですが、本当に実現したのはコミュニティの力です。

素晴らしいですね!今回のハッカソンはコミュニティ賞という形で、みんなからの投げ銭とか投げエクステンション(武器や防具)がもらえる賞があるのですけれど、どう思われますか?

非常にありがたいですね。我々が余計な協賛をしなくてもユーザーが、マイクリの発展がユーザー自身のためということを理解して頂いている。そこにはインセンティブが十分に働いていると感じます。これが本当にブロックチェーンの力だなと。

Gumiの國光さんみたいな言い方をすると「インセンティブ革命」が起こっています。

とても面白い動きですよね。マイクリの面白みを一言でお願いできますか?

マイクリを実際に運営して、ユーザーが実際に感じている新しい体験とは何かな?と思った時に、一言でいうとそれは『インセンティブ付きゲームの発展体験』なのです。

つまり、自分自身がそのゲームを盛り上げているという体験です。自分たちがアクションを起こすことでアセット価値が上がり、結果として自分達の為にもなる。我々のようなゲームを開発・運営している側だけではなくて、ユーザーたちも一緒に盛り上げていく事自体が面白いと思います。

やはりアセットを自分自身が保有していることがイーサリアム上で明確に書き込まれていて、なおかつやりとりもユーザー同士が自由にできるから、今までのゲームではできなかった事ができるようになっています。

データを見ることができる範囲を拡げることが、ユーザーのやりたいことが実現できるようになるのじゃないかと思って、ハッカソンをさせていただきました。これが結果として「MCH+」という名前でマイクリをより自由にしていくことになったと思います。

それから、Dappsを作ってみようとか、ブロックチェーンゲームをなにかこうやってみようとか、その開発に携わってみようという時に、まだまだブロックチェーンのゲームは課題も多いと思います。

例えば収益モデルを作るのも難しいですし、専門スタッフを集めるのもすごく大変。僕らが言うのだから恐らく確かだと思うのですが、ブロックチェーンゲームを成功させるはなかなか難しいのですよ。

めちゃくちゃ難しいと思います。

そのような時に何から取り組んでいいのか分からないというケースもあると思いますので、そういう方達に対して僕らの成功事例をどうやったらこの業界にフィードバックできるかなとかは考えていました。

一番簡単なのは、我々が作ったソースやノウハウをシェアすることかもしれません。ハードルが高くオリジナリティに溢れた大きなプロジェクトをやりますよというものではなく、ハードルはなるべく低く、でも何か面白そうだなと思えるようなきっかけを与えることが大事だと思っています。

そのことが業界の発展や、僕らの後に続くような新しいプロジェクトの生み出されるきっかけとなるとすごく面白いなと思います。もちろん、マイクリそのものも広がってほしいですから、私の想いとしてはマイクリが広がると同時にできれば業界が大きく広がって欲しいなと思っています。

今はまだ業界の規模が小さいのです。この規模が「どうもブロックチェーンゲームという面白い領域があるみたいだぞ。今までのゲームと何かが違うらしいぞ」となってきたら面白い。

「マイクリ単体だけを見ていても何が違うのかよくわからないな」となっていた人が、ハッカソンなどを通じて、「アセット使って違うゲームを作れるみたいだ」とか「そのゲームを作るためにこれから色々な仕組みが整えられてくるようだ」となると、いよいよ既存のゲーム業界も入ってくるかもしれない。

今まではDappsまで手が出なかったけれど、より簡単に新しいビジネスにチャレンジできる仕組みがあれば、新しい開発者も入ってくるかもしれない。マイクリやハッカソンがそういうきっかけになると良いなと思っています。

ブロックチェーン業界にいる人達は、業界を広げたり、今までの経験をみなさんにシェアすることが正しいと思ってはいても、実際に行動している人は少ないと思います。

そういう意味でいうと、double jump.tokyoさんは、今まで得た知識とかを本当に気持ちがいいくらいに全部シェアや還元をしているチームだなと思っていつも見ています。(笑)

全てオープンにする怖さや葛藤とかはまったくないのですか?

僕、ゼロなんですけど。(笑)

どちらかというと、この炎が消えることの方が怖い感覚・・・

うん、そうそう!

正直なところ、マイクリを出す時に最も怖かったのは「無風」なことでした。
加えて、この市場が消えてしまうことが一番怖いので、その怖さに比べたらそんなに・・・(笑)

その通りですね。本当にスタート時は無風が怖くて、今でも小さな種火でしかないと思っていますので、僕らが点けた種火が消えてしまうことが一番怖いですね。
これを想像したら本当に何でもやります!という気持ちです。

そうですよね。火を点ける前も大変でしたでしょうし、それがやっと点いたから。

お二人にはご紹介しましたが、CumberlandやBlockTowerなど、海外の人達から「マイ、マイクリって知っている?」と最近よく聞かれます。

だから、個人的には種火がどんどん炎になっていると感じています。日本だけではなく世界中から見てもらえているというのは、私もコミュニティの一人としてすごく嬉しいです!

ありがとうございます。

あと、仮に自分たちで抱え込んだとしても、パクろうと思えばパクるのは簡単なのですよ。
一生懸命抱え込んだとしても、いいところ半年です。

今の時代は。

そう。今の時代そんなものです。(笑)
だから一生懸命隠すよりもオープンにしてしまった方が、メリット多いなという気がしています。

なるほど。ブルーオーシャンを作るというのはそういうことなのかもしれませんね。

実際、ハッカソンで『DISCORD』(プレイヤー向けの無料で使える「ボイス&チャット」サービスアプリ)の開発をどんどん進められていますが、APIを公開した後、周りの反応や様子はどうでしたか?

真面目にマイクリの価値や色々な遊び方、使い道といったようなものを考えているユーザーの方が多いなと思いましたね。

エンジニアからの視点だけではない、一方でビジネスの視点というわけでもない、マイクリ自体の面白みという純粋な視点から取り組んでいる。

もちろん、マイクリをネタに面白いことを作ることができれば他にも展開できるという部分もあるとは思います。ただそれでも面白さにフォーカスしてちゃんと取り組んでいるところが、ブロックチェーンゲームはこれから発展していきそうだなと感じますね。

それは素敵ですね!
マイクリだけじゃなくて業界全体的の明るい未来が少し垣間見れたのですね。

はい。その通りです。
バックグランドも多様な方が頑張っているところもそう感じます。

開発をオープンにしてどんどんと進んだ先に、マイクリがフォークする可能性はあると思いますか?

あの・・・フォークしたらしたらでそれは面白いです・・・(笑)

やっぱりそう?(笑)

むしろフォークしてくれないかなぐらいに思っていますね。(笑)

ふたりとも、私が思っていたとおりの答え!!(笑)

あの「バンクシー」が世界で初めてサザビーズで落札された瞬間に作品をシュレッダーをかけたことが最近話題になったじゃないですか?

驚きましたよね。

あれは何がめちゃくちゃ価値があるかというと『世界初』だからです。
ですから、もしマイクリがフォークするのだったら、『世界初ゲームのフォーク』であってほしいですね。
むしろその方向に行きたい。(笑)

ブロックチェーンらしいですしね。

本当にそうですね(笑)

そして、フォークした方が発展してもう本体の方はいらないよと言ってくれると、僕らとしてもなんかすごくマイクリらしいなと思います。

ちょっと面白い。(笑)

終わり方!(笑)

でもアセット価値は消えないと思います。なぜならフォークしてもっともっと世界が広がったわけですから。みなさんが「新しい方が面白い」「そっちがいい」ということになったら、僕らがやるよりももっと上のものが現れたということだ思います。

そうなったらステークスホルダーにもプラスしかないですね。

いい方向に発展していけば、ステークスホルダー、運営、コミュニティを含め全部にいいことがある。結局これもブロックチェーンだからこそだと思いますし、やはりこういうところがブロックチェーンは面白いですよね。

現時点では、ブロックチェーンゲームはどうしても技術的に一部をオフチェーンにしなければUXが担保できません。運営も中央集権的にやらざるを得ないところがあるのが実情です。

本来はそういうことをやりたくてやっているのではなくて、完全にオンチェーンで非中央集権的なブロックチェーンゲームを僕らはやりたいのです。

ですから、やりたいことに近づいていけるであればもう我々の既得権なんてどうでもいいのです。どんどん理想にシフトさせていくというのが、基本的な会社のコンセプトですし、我々の想いでもあります。

エンジニアリングで考えると、例えば、プロトコルレイヤーの人達はやはり非中央集権で、その価値を保存したり、交換する仕組作りをやっていかなくてはいけない。なので皆さんすごく頑張ってやっている。

一方で僕らのようにそのプロトコルを利用する立場からすると、その価値をどう生み出し、拡大させ、持続させるかということが使命です。

その価値が拡大するのであれば、どうぞフォークしてくださいという感覚です。本当にただ単にそれだけです。価値をどう生み出すのか、発展させるのか、継続させるのか。それがどういう方法でも全く問題ありません。

いや~素敵です、やっぱり!

従来のゲーム業界からすると「お前ら狂っている」と言われますけど、「本当に狂っているのかな?」と・・・。

逆に僕らが今選択しているこのブロックチェーンという世界においては、僕らのやっていることが正しくて、もしかするとただみんなが体験したことがない、慣れていないだけなのかなという気がしています。

これから先、もちろんみんなで一緒に発展していくのですが、やっぱり先頭を走って背中を見せてくれているのはマイクリだと思います。

世界中の人がもっとマイクリの情報が欲しいはずです。そういうところにもこの記事が届けば嬉しいなと思います。これからも頑張ってください。今日はありがとうございました。


2019年6月6日、私はロシアで開かれたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに参加した。そこで開催された「ブロックチェーンと暗号通貨技術:過去、現在、未来」というセッションで、イーサリアムの創業者であるヴィタリック・ブテリン氏にブロックチェーンゲームの可能性について尋ねてみた。

私の質問に対して、彼はこう答えた。

「ブロックチェーンゲームは開発者にとってハックであることは間違いない。アイテムを集めることによって更なるスキルを手に入ることで充実させるブロックチェーンに基づく『individual (個人的な)ゲーム』が多いと思う。個人的にとても興味深いカテゴリは、異なるゲーム間でのアセット交換が可能なインター・オペラビリティを活かすアイディアだ。これは全てのユースケースにとって正しいやり方という訳ではない。しかし小さなゲームの開発者にとって、ネットワークの拡張にも繋がるようなアイディアだと思うし、ゲーム大手との競争に役立つ仕組みだと思う。」

ヴィタリック・ブテリン氏の言葉から、「マイクリプトヒーローズ」のような日本から生まれ愛されているゲームが、世界に広がってゆく未来を強く感じた。そして今回、double jump.tokyoが発表した『MCH+』の提供は、私が感じたその未来を裏付けるものだ。『MCH+』の開発事例として、「Crypto Spells」や「マイクリダンジョン」があるが、このような事例に続くゲームが待ち遠しい。彼らの想いと挑戦は、業界の発展に大いに貢献すると共に、ブロックチェーンゲームの可能性を大きく加速させることになるだろう。


【上野広伸氏:プロフィール】

株式会社野村総合研究所にて数々の金融システムの基盤構築に参画する。その後、株式会社モブキャストにて執行役員、技術フェローを歴任し、設計・開発、スマートフォンゲーム開発基盤の構築を指揮する。ブロックチェーンゲーム開発専業のdouble jump.tokyoを設立し、CEO兼CTOに就任。自社ゲーム「マイクリプトヒーローズ」がDAU/売上においてEthereumブロックチェーンゲーム世界一を記録した。


【玉舎直人氏:プロフィール】

株式会社アスキー(現株式会社KADOKAWA)を経て、NTL株式会社を創業し、数々のオンラインゲームの企画・開発に参画。前職の株式会社モブキャストにて執行役員、Mobcast Korea代表理事、取締役CMOを歴任し、スマートフォンゲーム事業、海外事業、IPゲーム事業の立ち上げを指揮。


「MY CRYPTO HEROS 」ホームページ:https://www.mycryptoheroes.net/ja
『MCH+』について:http://www.mch.plus/


『MCH+』開発事例


グラコネ藤本の本が出ました

人生を変える
「繋がりの法則」
人脈から一歩その先へ

藤本 真衣 (著)

セルバ出版

Web3新世紀
デジタル経済圏の
新たなフロンティア

馬渕 邦美 (著, 監修),絢斗 優 (著),藤本 真衣 (著)

日経BP

  • twitter
  • youtube
  • medium
  • spotlight

Copyright © 2016 gracone All Rights Reserved.