つながるをつくる。株式会社グラコネつながるをつくる。株式会社グラコネ

勝手にGracone対談

勝手にGracone対談

今井崇也

フロンティアパートナーズ 合同会社代表CEO

1980年新潟県生まれ。新潟大学大学院にて素粒子理論物理学で博士号(理学), Ph. D. を取得。カカクコム株式会社、BizMobile株式会社にて、検索エンジンの開発/サーバ運用、R&D、大規模データ分析、データ蓄積システム構築などを経験。2014年4月、フロンティアパートナーズ合同会社を設立。現在代表CEO&創業者。株式会社ブロックチェーンハブ技術アドバイザー。一般財団法人ブロックチェーン技能認定協会アドバイザー。

増島雅和

森・濱田松本法律事務所

第二東京弁護士会、ニューヨーク州弁護士会所属。経済産業省「ブロックチェーン検討会」委員、一般社団法人 金融革新同友会FINOVATORS 代表理事、一般社団法人 仮想通貨ビジネス勉強会 理事
金融庁監督局、国際通貨基金(IMF)金融安定査定プログラム(FSAP)外部顧問などを経て現職に。革新的なビジネスモデル創造を目指す新興企業や、協業を通じ自社のビジネスモデル革新を目指す既存企業の法務戦略パートナーとして、新たな価値の共創を目指す。

今、仮装通貨が抱えている問題点とは?

藤本真衣

今回の『勝手にグラコネ対談』は、前回ひき日続き、増島さんと今井さんをグラコネします。それではグラコネスタート!

増島雅和

金融法学会という会が、年次総会的なことを定期的にやっていて、シンポジウムなどを開いています。その中で取り上げられているのが、金融テクノロジー関連です。社会的に凄い方たちが、真面目に仮想通貨の議論をしているのですが、これがつまり、ビットコインの話だったりするんです。
例えば、ビットコインって預託とかの概念がちょっと作りにくいプロトコルですが、それを仮想通貨の弱点と称して言ってみたり、ブロックチェーンの弱点と称して何か言ってみたり。「そんなものコード次第だ」って僕たちは言いたいわけですよ(笑)
僕はこのことに、ふたつの意味を感じていて、ひとつは、エスタブリッシュされたと言ってもたいしたことないということ。もうひとつは、当人たちは大真面目に議論しているつもりだと思うんですけど、政策を決定する人たちが思い込みのまま、それが権威を持って本当に政策のベースになってしまうと大変なことになるなっていうこと。僕は、その立場としては深い議論をしている暇はないと思っています。なぜなら、どんどん変わっていっちゃうので。私は、権威のほうには行かずに最新の情報って追いかけて行くべきだと思っています。

藤本真衣

確かに、どんどん新しいものが出てきて追いつけない・・・

増島雅和

一方で、時間に耐えるようなすごい理論を打ち立てている人もいて、例えば、東大の法学部の教授の中には、風雪に耐えるロジックと理論を打ち立てている人もいます。ここにいない以上は、どうやっても数年前の議論をあたかも自分は正しいものを掴んだというふうな感じで大論文として発表するという、ある意味、滑稽な状態になってしまっている。あれではない姿で貢献をしていくようなモデルを立てた方がいいなと改めて思いました。

藤本真衣

増島先生は何か発言されているんですか?

増島雅和

結局、ネットが早いだろうと思っているということですけどね。ちゃんと論じるためには相当準備をして調べなきゃいけないですが、その時間がないし。やはりネットで正しいタイミングで正しいものを出して、それが顧みられる状態を作らないといけないっていうのがあります。でも、旧態依然のエスタブリッシュされた価値観のところには入り込んでいないので、この引用論文にはいっさい利用されてない状態になっていて、明らかにここでやっていることが政策との関係では、多少インサイトはあるにしても弊害がけっこう大きいかもしれないというところに、どういう形で、「そうじゃなくてさ」っていう方のやつをリアルタイムでやっていくかっていう。これは結構大事になってくる部分なんですけどね。

藤本真衣

法律、ローファームとアカデミアなど、政策側である程度、自由な議論空間があった方が好ましいですよね。

増島雅和

本当はそうだと思いますね。エスタブリッシュメントが、やはり自分の殻に入っているというのと、要するに自分の得意分野で勝負したいんですよ。なぜならコードが分からないから。むしろ、そんなの分からなくても自分たちは論じられると思っているし、所詮はこういうことだろっていうふうに出してくるわけなんです。でも、そのベースになっているのは、所詮はコードで、どう仕組むかっていうのは、どういうふうにアーキテクチャーを考えるかって話だけですよねっていうこと。実は、そこがあんまりよく判ってなくて。なんと言っても与えられた法律みたいなのに対して、ああだこうだ言うのが彼らの仕事なので、それと同じように与えられたコードと与えられた仕組みの中で、ここに問題があるとか発言することが、ある意味、存在意義だと思い込んでる部分もあるんですよね。本当は、ミックスアップしたほうがいいというふうに思いますし、こちらの世界で、今ここにコミットしている人たちは、もう全然違うところで一級の知見と能力があって、全然別のものなんですけど。お互いリスペクトしたら、本当はコラボして、もっとこういうこと考えませんか、みたいなことができるし、アメリカなんかそういうことをしていると思うんですよね。
Corda(コルダ)みたいなところだって作ろうとした時に、ああいうレベルの議論って、なかなか達しないんですけど、それはやっぱりコラボレーションが充分でないというのと、リーガルやっているのって、コンピューターサイズのダブルメジャーみたいな人がうようよいる中でできる世界みたいなのがあるわけじゃないですか。そこを今度はダブルメジャーの人がいなくても、コラボレーションできるはずなので、そういうふうな議論ができるといいですね。

藤本真衣

通訳的な人材がいるといいですよね。

ブロックチェーンをどう捉えていくか

増島雅和

10年ぐらい前までは、法律の世界の人は、経済学の人とも議論ができなくて、ロー&エコノミーが日本は遅れていました。それが、ようやく最近になって意思疎通ができるようになって、ゲノム理論の観点から解釈したり、こうするべきっていうのを打ち出せるようになってきたっていう印象があります。
今度のは、法律とテクノロジーと金融論みたいな。この三つが組み合わせたしつらえである必要があって。でも、やるべきことはそういう人たちのコミュニケーションと、まさに先ほど藤本さんがおっしゃっていた通訳者を介して、まずはコミュニケーションしてみて、だんだん相手の言葉が分かってくるみたいな感じになってくると、より直接的にコミュニケーションできるっていう、こういう感じになっていくはずなんですよね。

今井崇也

僕の考えでは、法律を作る側だったり、既にエスタブリッシュメント層だったりっていうのはあって、既に社会をつくっているので、それはそれで良いと思うんです。ブロックチェーンをどうプライベートなものとして見るのか。また、コンソーシアムとして見るのか、パブリックにするのかっていうのは、見る人によって全然話が変わってくるんですけど、僕自身、正直言うと全然興味なくて。経済の構造が違うように見えてるんですね。
ビットコインの話をすると、お金を送る時に今までは銀行を介するか企業を介して送っていたのが、介さなくても送れるようになり、構造も誰かに聞く必要もなく、さくっと作ってしまえっていう話で。それって、あのような仕組みの本質は、その間を媒介者がいなくなることだと思うんです。媒介者がいなくなることで、単に仲介をすることによって、お金を得ていた企業は、それはそれで今までなくてはならないもので、そうじゃないと今までの世界が成り立たないので、当然必要なんですけど、単に流しているだけだったとすると、それって技術によって淘汰されてしまうこともある。頑張って媒介者をしていた人たちがブロックチェーンの技術を取り込もうとしているように僕には見えていて。でも、だんだん今まで一番面白かったはずの部分がずれてきてるというか。中間媒介者に合ったように作ってあるというか。そこに僕は違和感を感じているんです。
AIで後10年後20年後になくなる職業の話を聞きますけど、あれは確かに人によってはなくなっちゃう、どうしよういう人はいるわけですけど、今までの過去100年とか見たら、そんな事はよく起こっていた事なんですよね。タイピングする職業があったのが消えたりとか。自然な流れというか、技術の進歩によって織り込まれていくんだろうと思うんです。 要するに中間媒介者が消えてしまうとか、職部門がなくなってしまうことではなく、より別のところに人間が注力できるっていうのが、面白いことだと思います

藤本真衣

その視点、面白いですね!

今井崇也

違う発展形態をするって気がするんですよね。

今井崇也

僕の中では、経済社会が別々になっていて。今は過渡期で、無理矢理ふたつの技術を、そしてふたつの経済社会を融合させようとしている。おそらく融合しないんですけど。もちろん、法律は社会を構成するうえで当然必要なので、ないといけないのですけど、ただ、エスタブリッシュメント層を説得するっていう時間をかけるんだったら、その新しい経済社会のほうを発展させるべきだっていうのが、僕の考えです。
まだまだ途中段階ですけどインターネットも似たような発展だと思っていて。例えば、1990年代後半とか、マネックス証券の松本大さんが90年代後半にゴールドマンサックスパートナーを辞めてっていうところがあって。あれって、当時の認識からしたら、何をアホなことをやっているんだって認識なわけです。彼の判断は、今から考えると正しいわけですけど、当時からすると、アホなことをしているように見える。なんか、僕にはそれと似たような感じで見えるというか。仕組みとしての構造が全然違うものが今ぶつかっている最中。ニュースにいっぱい出てくるものには、ぶつかってる跡が出てきている。

藤本真衣

イノベーションのジレンマみたいなものが至る所にあるって感じですよね。

増島雅和

まぁ、どっちかというとインターネットが飲み込みつつあるっていうふうなところでしょう。既存経済があんまり良くないから、どんどん浸食をしていっている話なんですよね。じゃあその後に経済ってどうやって回すんですかねってことは、あんまり考えられていないので。アンチテーゼとしてこれが存在しているのは、インターネット側があるから言えている部分が、実はあったりとかするんですよね。
ただ、インターネットが強くなっていった後に、さて、どんな経済社会があるんでしょうかっていうを、みんな思っているとは思うんですけどね。働かなくてよくなるっていうのが、あるのかないのか、ちょっとよく判らなくてですね。メールとか通信手段が90年代後半からビューンと発展して、それによって、そのテレックスはなんだって言って今まで何日か、かかってましたみたいなのを一瞬でいくようになって、その分だけ楽になると思いきや、その分だけ早くなって忙しくなっただけじゃないかみたいな話もあって(笑)

今井崇也

「Mastering Bitcoin」という本の日本語版を出版した後、齊藤元章さんの「エクサスケールの衝撃」っていう本を読んだんです。これに、いわゆるレイ・カーツワイルの、あのシンギュラリティの話、技術的特異点の話があって、ずっとコンピューターの性能がどんどん速くなっていけば、人間の脳の処理能力を超える。

今井崇也

僕は、どんどん技術が発展していって、処理速度がガーッて速くなって、生成・伝搬される情報量が増え、無限大に発散するのはなんか気持ち悪いと感じていて、指数関数的に増加するのであればある時点で発散することはないのですが、どんどん発展していってもおそらく発散に近い急激な増加はしなくって、世界の構造のほうが自然な形に変わるだろうと思っています。
朝永振一郎さんがノーベル賞をもらったのって、ざっくり言って量子電気力学っていうQEDっていう理論体系があり、その電子の動きをもうちょっと詳細に調べましょうっていう理論体系があって、それがうまく実験で証明されたのでノーベル賞をもらったんですけど。なんでそんなのを朝永さんは作ったかっていうと、その以前の理論に問題点があったと。質量とか電子の電荷とかが、あるやり方で計算すると、無限大に発散してしまう。測定しているのは有限値なので、そんな理論はおかしい。しかし、それ以外のところはうまくいっている部分もあるので、どうにかしてうまくなんないかなっていうことを考えた中で、ひとつ繰り込みっていう方法があって、有限にする形がありますと。それって、その当時は繰り込み手法っていう計算の単なるやり方だったんですけど、それを後から見た時にどう見えているかっていうと、どの距離の物理を見るかによって、有効理論としての物理法則が変わるということを表しています。

例えば、1メートルスケールの世界はニュートン力学とかが成立してて、もっと小さいのは量子力学とか、もっと小さい時は、場の量子論がありますけど。どのスケールを見るかによって、物理法則が変わりますと。ちょっと話を戻して、このまんまいくとおそらく、情報の処理能力、情報伝搬量がどんどん増えていくでしょう。CPUの配線の幅の限界はあるかもしれませんが、世界中にインターネットに接続するセンサ、スマートフォンがどんどんばらまかれているので、情報量は確実に増える。おそらく現在の人類の脳の処理能力を超えて、どんどん超えていくんじゃないかなと思っていますが、無限大に発散することはないので、この世界の規則性のほうがなにかしら変化するか、人間の感覚のほうが変化するんじゃないかなと思います。この話ってちょっと飛躍をしてしまっていますが、ただ、情報がすごいどんどん増えていった時に、それが脳に直接影響を与えることになっていくんじゃないかなと思っていて、まぁこれは2100年とか、先の話なんですけど。

踏み込んで考えるとブロックチェーン自体もAI的

増島雅和

データが増える一方なのは、金融が典型的ですね。金融っていうのは情報非対称性が存在することを前提に、この差を使ってこう、お金を動かすっていう話で。この差っていうのは結局、将来、予測であったりとか、そういうもの。あとリスクとかがあるわけですけれども。
経済学の一番初めの基礎の話っていうのは、完全情報といって、すべての情報が瞬時に知れ渡った場合にはこうですねっていう話がいっぱい書いてあって。そうすると、どこか均衡に達するんですよね。常に情報みたいなのを徹底してとられて、すべてが共有される世界になると、たぶん株価が付かないとかですね。株価、無理ですよね。揺れないかもしれないですよね。揺れたとしても、瞬時に吸収をされてしまうので、そこにはアービトラージっていうのが存在をしなくなるとか。そうすると、これがこう動かないと、たぶん経済の前提が崩れてしまうので、今のままでは動かなくなるんですよ。ある意味、資本主義の今の形ではない姿にトランスフォームする話で。それはなんか夢物語の話というよりは、情報とかデータとか、こういうものを非対称性が解消されてくることを考えると、有効な技術モデルがなくなっていくっていうふうな話になっていて。そこにどんどんみんながデータをひたすら生み出して、それを効率的に利用する。要するに、その世界にみんなで突き進んでいる世界なんですね、っていうことではありますよね。

今井崇也

おそらく、完全に情報が共有されることはないと思っていて。理由は “古典”情報の伝達速度って、光速を超えないので。完全に情報が共有されることはないんですけど、ただ、そのやりとりの量は爆発的に増えるだろうと思っています。たぶん、この周りを飛ぶ電磁波の量とかも、どんどん増えるだろうと思っていて。なので、おそらく株価のやりとりっていうのが、極めて効率的になると。ただ差は必ず起きるんですけどね。

藤本真衣

やはりお二人が引き合うとどんどん面白くなっていきますね。本日はお忙しいなか、どうもありがとうございました。とても勉強になる貴重なお時間をいただきました!

グラコネ藤本の本が出ました

人生を変える
「繋がりの法則」
人脈から一歩その先へ

藤本 真衣 (著)

セルバ出版

Web3新世紀
デジタル経済圏の
新たなフロンティア

馬渕 邦美 (著, 監修),絢斗 優 (著),藤本 真衣 (著)

日経BP

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